【Pitchfork】Best Album 2011 No.1 Bon Iver/『Bon Iver』 | 22:14 |
北米の音楽サイト「PITCHFORK」、ここ10年くらいですっかり著名になりましたが、意外と和訳は出回っていないようです。というわけで記事の一部を訳してみることにしてみました。ぼくは英語の専門家でもないので誤訳もあるかと思います。訂正して頂けると僥倖です。
今回は2011年PITCHFORK年間ベストアルバムに選出されたBon Iverのアルバム『Bon Iver』の記事を訳してみました。時間があれば他の記事も訳していきたいと考えております。原文はこちら→http://pitchfork.com/features/staff-lists/8727-the-top-50-albums-of-2011/5/
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01. Bon Iver: Bon Iver [Jagjaguwar]
『Bon Iver』はBon Iverの神話から Bon Iverを解き放つレコードかもしれない― 終わることなく繰り返される創作神話(小屋、失恋、Wisconsin)から、彼のあご髭から想起されるものから、Kanye Westとのパートナーシップがほのめかすものから。『Bon Iver』は6秒の長い沈黙から始まる、それはある種のクリーニングだ。このことは胸に留めておいたほうがいい。
すでに確立されているフォークの文法のルール内で作られた2008年の『For Emma,Forever Ago』と違い、『Bon Iver』は馴染みがなく、拡がりがあり、意欲的だ。この、きらきらと光るソフトロックの上に広がるJustin Vernonのファルセットは、子供のようなあこがれに染められている― 人や場所に対してではなく、意味に対するあこがれに。彼はぎりぎりの高さまで声を押し出し、惜しみないようにも控えめなようにも感じるスタイルで声を操る。その声は曲の表面の上で溶けだし、一つの層、テクスチャとなり、すべてのキーボード、サックス、エフェクトをかけたギターと同等の音として配置される。このアルバムの豊富なレイヤー(それは煉瓦のように幾重にも重ねられている)に関して、馬鹿らしい用語(Vernonがこれらの曲は「サウンドスケープ」だと言及しているとしても)やほとんど理解されないメタファーなしで語ることは、批評的なチャレンジを伴う。究極的には、ただこう言えば十分な気がする。『Bon Iver』は無理やりに集められた、野心的な、時には破壊的な、よく整えられた音でできた1曲の練習曲であると。
また、不明瞭な話法がこのアルバムにはいくつも見られる。曲名は実際の地名からとられたもの(「Lisbon,OH」「Calgary」)と架空の場所からとられたもの(「Hinnom, TX」「Minnesota, WI」)があるが、現実か想像上かというところに大きな違いはない。『Bon Iver』のほとんどの曲は記憶にかかわるものだ― 時間の経過が我々の肉体、愛し方にどのような影響を及ぼすか、いつかの失敗をどのように考えるか、以前の自分自身をどうやって捨て去るか―。
そして最後に、Vernonは欺くのがうまい頭の切れる言語学者であり、ナンセンスなフレーズ(「鎧を通せ、木の真実を身に付けた鎧を」(訳注『Bon Iver』2曲目「Minnesota, WI」の歌詞))と特定できる引用([1]「3番と湖、それは燃え尽きた/廊下はぼくらが祝福することを学んだ場所だった」)を混ぜ合わせる。これは夢のロジックであり、記憶のはたらきを示したものである。リスナーが、言葉の連なりが意味するものをやっきになって探しているかもしれないときに、Vernonとバックメンバーは自己内省の注釈のために十分すぎるサポートを与える。結局のところ、これらの曲は感情のパズルの空いてる場所を埋める虫食いゲームのように鳴らされ始める。「わたしは偉大ではなかった」(訳注『Bon Iver』3曲目「Holocene」の歌詞)というような宣言のなかに見られる、うぬぼれと謙虚さとの激しい矛盾を孕んだコンビネーションによって、虫食いの空白を埋めたいという気持ちがまぎれもなく促進される。2011年という年を分析する際の、最適な手掛かり。--Amanda Petrusich
[1] 訳注 『Bon Iver』3曲目「Holocene」の歌詞なのですが、訳者はこの部分が何の引用なのかわかりません。知っている人がいたら教えてください。原文は"3rd and Lake, it burnt away/ The hallway was where we learned to celebrate"です
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